2009年06月05日

退職金の法的性格

nigaoe.jpgこんにちは。富山事務所の蓑輪です。

 

 今日は退職金の法的性格についてお話します。ちょっと難しい話かもしれませんが、頭の体操感覚で気楽に読んでください。

 

 日本では約9割の企業が退職金を支払っているといわれています。逆に言うと、残りの1割の企業には退職金制度がないということになりますが、退職金を支払わない企業があっても法律上差し支えないのでしょうか?

 

 結論からいえば、退職金制度がない企業が存在しても、特に問題はありません。というのも、我が国では、退職金を支払うかどうかは、会社が自由に決めていいことになっており、退職金支給が法律で強制されることはないからです。

 

 ただし、一旦退職金を払うと決めた企業は、就業規則などにその支給ルールを記載し、そのルールどおりに退職金を計算、支給していかなければいけません。

 

 以上をまとめると、「退職金を払うかどうかは自由だけど、払うんだったら、ちゃんと規定を作って、その通りに払っていきなさい」というのが、退職金の法的性格といえるでしょう。

 

  なお、これは余談ですが、お隣の国、韓国では、勤続1年以上の従業員に対し、給与の30日分の退職金を支払うことが義務づけられています(勤労基準法)。

 

 ところで、一旦就業規則等に記載した退職金の支給ルールを変更することは可能なのでしょうか?


 これについては、一応可能です。ただし、会社が一方的に退職金額を引き下げたり、制度そのものを廃止したりしてはいけないことになっています。

 
 過去の裁判例では、一方的に退職金額を引き下げた企業に対し、厳しい判断が下されています。代表的なものとして、「退職金の計算方法を変更し、穴埋め措置なく、退職金を引下げたことはNG」と判断された御国ハイヤー事件(最高裁昭和58年7月15日判決)が挙げられます。

  

 退職金制度はある程度自由に設計できますが、一旦制度化してしまうとそう簡単に変更することは難しいので、十分な検討を行った上で、退職金規程を作成することをお勧めします。

 
 【まとめ:退職金の法的性格】

 退職金の支給 法的には強制されていない
 退職金の支給ルール 法律で就業規則等への記載が義務づけられている(労基法89条、90条)
 退職金規程の変更 一定の手続きを経て実施可能(労働契約法9,10条)

2009年06月19日

確定拠出年金は退職金の資金準備方法たり得るか?

nigaoe.jpg こんにちは。富山事務所の蓑輪です。

 

 基本的に私の更新日は金曜日ですが、昨日と今日連続で更新させてもらいます。立ち上げて間もないこのページですから、時間が許す限り、皆さんに有益な情報をガンガン提示させてもらおうと思います。

 

 さて、今日のお題は「確定拠出年金は退職金の資金準備たり得るか?」です。

 

 退職金・企業年金コンサルティングの現場で、よくお受けする質問があります。それは・・・

 

 「やはりこれからの退職金は確定拠出年金でしょうか?」というもの。

 

 私はこの質問に対し、NOと答えています。ハッキリ言って、確定拠出年金は退職金の資金準備には適さないと考えています。というのは、確定拠出年金制度はもともと退職金の資金準備方法としてではなく、企業(又は個人)が公的年金の上乗せを行うために実施することを想定して設計された制度だからです。その証拠に確定拠出年金で積み立てた年金資産は60歳以降でないと支給されないしくみになっています。

 

 つまり、中途退職者に対し、確定拠出年金から退職金が支給されないわけです。中途退職者の年金資産は、どんなに早くても60歳になるまで塩漬けになるのです。折角、退職金を確定拠出年金で積み立てたのに、中途退職者に退職金が支給されないって変ですよね?

 

 以上のことから、最近では、確定拠出年金は退職金の資金準備方法としては、全く使えない制度であると現場でハッキリ言うようにしています。

 

 ただし、確定拠出年金自体が使えない制度と言っているわけではありません。この辺は、誤解しないでください。確定拠出年金制度の導入目的を「退職金の資金準備」から「従業員の老後の生活保障」や「福利厚生」というふうに切り替えると、大いに使い勝手の良い制度であることに気づきます。

 

 本来であれば、このように発想を転換した上で、退職金制度を見直す必要があります。我々が、確定拠出年金を実施している企業において、退職金規程を作成する際に最も気を使うのは、この部分です。では、具体的にどう対応していくべきか?それは、今後のネタとしておきましょう(笑)。

 

<一口メモ:日本における企業年金>

1.厚生年金基金  

 厚生年金基金は、まとまった人数が集って初めて設立可能。

  1. 1つの企業が単独で設立・・・常時500人以上の加入者(※1
  2. 2つ以上の企業が共同で設立・・・合算して常時500人以上の加入者(※2

 ※1 平成17年4月1日以降の新規設立の場合は、常時1,000人以上

 ※2 平成17年4月1日以降の新設の場合は、常時3,000人以上

 

2.税制適格退職年金

 税制適格退職年金は、昭和37年に新設された制度。従業員数15名から加入できるお手軽さがうけて、高度成長期に急速に普及。しかし、バブル崩壊後、運用の悪化に伴う積立不足が膨らみ、平成24年3月をもって廃止されることが決定している

 

3.確定給付企業年金

 税制適格退職年金の後継制度。基本的なしくみは適格年金を踏襲しているものの、原則として、積立不足を毎年償却する義務づけているなど「受給権者の保護」を強く意識した制度になっている

 

4.確定拠出年金

 アメリカの内国歳入法第401条k項を参考に作られた制度であるため、日本版401Kと呼ばれることもある。1〜3の制度は、将来の給付額を約束した上で実施することが義務付けられているのに対し、確定拠出年金は毎月の掛金額だけを決めておき、給付額は運用実績により決定されるというしくみになっている。アメリカは、日本のように終身雇用という考えはない上に、自助努力の国だから、日本のような「退職一時金制度」はなじまない。そんなアメリカの制度を参考に作られているのだから、確定拠出年金制度は、日本人の考える退職金とはあまりマッチングしないのは道理だと思うが・・・。