2009年06月23日

自己都合退職の申し出はいつまで?

似顔絵全身p.pngこんにちは、福井事務所の今井です。

 

会社からよくあるご相談の一つに、

自己都合退職の申し出日を巡るご相談があります。

 

例えば、就業規則の退職規定には

「自己の都合により退職するときは、遅くとも1ヶ月前までに会社に退職願を提出し、会社の承認を得なければならない」

と書いてあるが、民法627条では、「退職日の2週間前まで」に退職を申し出ればよいと

されており、社員から2週間前に申し出を受けた、と言うものです。

 

この場合、就業規則の規定が優先されるか民法が優先されるかは、

民法627条が任意法規であるか強行法規であるか、と言った問題に繋がり

学説や裁判例でも判断の分かれる非常に難しい問題です。

 

代表的な判例では「昭51.10.29、東京地裁、高野メリヤス事件」で民法の2週間前の

規定を優先した判決がありますが、労働基準法第20条の解雇予告(30日前まで)との

均衡から、30日程度の期間であれば就業規則の効力を認めるべき、との説もあります。

 

しかし、ここで私が言いたいのは会社は裁判所でも研究室でもないので、

就業規則には、会社にとって必要かつ合理的な期間を定めればよいということです。 

 

就業規則は労働基準法に違反したことを規定してはいけませんが、

自己都合退職の申し出については労基法に定めがありません。

業務の内容にもよりますが、1ヶ月程度であれば、一般的な社会通念から

考えても会社が業務引き継ぎまでに必要な期間として

十分合理的であると思います。

 

円滑に退職手続を進めて、従業員とも遺恨を残さず円満退職になるよう

会社がしっかりとルールを定めて、社員に意識を浸透させることが重要です。

 

<退職手続規定のポイント>

1.自己都合退職の合理的な申し出期日と書面による退職願の提出を明文化する。

2.業務引継の必要性を明文化する。

3.雇用契約書等にも退職申し出日を明文化し、社員に周知させる。

 

しかしここまでしても中小企業の実態としては上記以前の問題として、

辞表も出さずに「今週いっぱいで辞める」と言って引継ぎもせずに

辞めてしまう社員も存在しますね。

 

こういった身勝手な社員についても就業規則で対策を講じることは可能です。

例えば、就業規則で定める正当な退職手続をしなかった社員について

「退職金規定」で「退職金の減額・不支給」を定めたり、

「懲戒規定」で、「減給の制裁」を定めて最終給与を一定額減額したり等です。

 

まずは就業規則を社員に浸透させておくことが先決ですが、

様々な角度から退職する社員についてもリスク管理を考えましょう。

2009年09月08日

継続雇用、定年延長をどう定める?

似顔絵全身p.pngこんにちは、福井事務所の今井です。 

 

  少し古い話ですが、平成18年に高年齢者雇用安定法が改正され

平成25年までに65歳までの雇用確保措置が義務化されました。

雇用確保措置の年齢は年金(定額部分)の支給開始年齢の引き上げ

スケジュールに併せて、以下のとおり段階的に実施されています。

 

 平成19年4月1日〜平成22年3月31日  63歳
 平成23年4月1日〜平成25年3月31日  64歳
 平成25年4月1日〜  65歳

 

もう施行から随分経つので、何らかの措置を実施している企業は

増えていますが、まだまだ中小企業の就業規則は「定年60歳」

だけになっているケースが少なくありません。

 

雇用を延長しなければならない理由として、現在60歳前後の方の

60代前半の年金額は報酬比例部分として月10万円以下

となるケースが多く、また昭和28年4月生まれの方(男性)からは

その一部の年金すら61歳からの支給となってしまうので、

60歳で退職となると生活ができなくなってしまうのが実情です。

 

実際のところ、65歳くらいであれば、特殊な業務を除いては

まだまだ現役として働ける方も多く、企業の価値観としても

数年前に比べて雇用延長に対する抵抗感はなくなってきていると思います。

 

ただ思いはあっても制度は出来ていない、という会社では

従業員が安心して働けるようにするためにも就業規則で何らかの

措置を講じましょう。

 

この雇用確保措置のパターンとしては

主に以下の4つのパターンが考えられます。

 

チェック.gif1.定年延長

・・・定年をそのまま65歳まで引き上げる

チェック.gif2.嘱託再雇用制度

・・・60歳の定年年齢などで一旦退職とし、

その後新たな給与体系、勤務体系等に変更して再雇用する

(1年更新などの契約形態が多い)

チェック.gif3.定年の定めの廃止

・・・定年を設けず、従業員が働きたいときまで勤務を認める

チェック.gif4.勤務延長、選択定年制度

・・・原則60歳定年などとし、希望者や一定の要件を満たした従業員について

今までの雇用契約を終了させることなく雇用を継続する。

また、これと逆に、原則65歳定年などとし、希望する者のみ

60歳定年を認め、その後は嘱託再雇用をするという制度もある。

 

現実的には2か4が制度としてはやりやすいでしょう。

 

定年を決めるときに年金以外に大きく関わってくるのが退職金の問題です。

従業員とすれば65歳への定年延長は歓迎しても、退職金は60歳でもらいたい

また会社も60歳で支払ってしまいたい、 というケースがあると思いますが、

この場合は、一旦60歳で退職とし雇用を切った上で嘱託再雇用などの

取扱いにする必要があります。

 

時々質問を受けますが、退職金は非課税枠が大きく優遇されているため、

実際に退職してない(勤務延長)のに途中で

退職金を支払うことは認められておりません。

 

こういった問題に対して、60歳時点で定年を延長するか嘱託再雇用を選択できる

(選択定年制)制度の規定例としては以下のようなものがあります。

 

(定年)

第○条  従業員の定年は満65歳とし、定年に達した日の直後の賃金締切日を退職の日とする。

  (2)前項に関わらず、従業員が60歳到達日の3ヵ月前までに60歳定年を希望する旨を会社に申し出たときは、満60歳での定年を認め、定年に達した日の直後の賃金締切日を退職の日とする。

(3)前項により60歳定年となった者で、本人が希望した場合、希望者全員を定年退職日の翌日から満65歳まで嘱託として再雇用する。

(4)嘱託再雇用の場合原則として1年毎の契約更新とし、労働条件については、本人と話し合いの上、個別に通知する。

 

あと数年で4人に1人が65歳という時代を迎えるにあたり、65歳までの雇用は

感覚的にも当たり前のものになってきています。

国としては既に70歳までの雇用を奨励して助成金なども充実させてきていますが、

各企業で実態を鑑みて、慎重に検討して制度を策定しましょう。

 

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2009年09月25日

出向者の解雇について

nigaoe.jpg こんにちは。富山事務所の蓑輪です。

 

 ここのところ、福井事務所の今井に更新を任せきりで久々の登場となります。

 

 さて、今日は「出向者の解雇」についてお話しましょう。論点は次の2つです。

 

  1. 出向先は出向者を解雇できるか?
  2. 出向命令の拒否は解雇の理由になるか?

 

 まず、「出向先は出向者を解雇できるか?」という1つ目の問題について考えてみましょう。結論から言えば、出向先は出向者を解雇することはできません

 

 出向とは、「労働者が出向元に在籍したまま出向先において、出向先の指揮命令下において労務を提供すること」です。つまり、労働契約はあくまでも出向元と出向者の間で締結されているというのが大原則なのです。したがって、たとえ出向元の就業規則に規定する解雇理由に該当したとしても、出向元には解雇する権利はありません

 

 では、次に「出向命令の拒否は解雇の理由になるか?」という論点について検討します。

  

 こちらも結論から言うと、「解雇は可能である」と考えます。しかしながら、出向命令の拒否を理由した解雇を成立させるには、いくつかの条件をクリアする必要があります。

 

 まず第一に、就業規則や労働協約などに基づく出向であることが求められます。つまり、就業規則や労働協約などに出向に関する規定を設け、それに基づいてなされた出向でなければ、出向命令そのものが無効と判断されてしまうおそれがあるのです。

  

 仮に、出向命令自体が無効と判断されれば、当該命令拒否を理由とした解雇にも合理性がなくなります。したがって、就業規則や労働協約に出向に関する規定を設けておくことは、とても重要です。

 

 実務的には、「業務上必要な場合は、従業員に出向を命じることがある」という最低限の規定を設け、入社時の誓約書等において、就業規則を守る旨の包括的な合意を得ておけば、出向命令そのものが無効になる可能性は低くなります。

  

 ただし、前述のように対処したとしても、必ず出向命令が有効になるわけではありません。なぜなら、規定があったとしても、出向先と出向元の密度が薄い場合や出向による労働条件の著しい変更等がある場合は、出向命令権が否定されることがあるためです。

 

 たとえば、関係性の薄い会社などに出向させる場合は、就業規則等に出向に関する細かい規定を設けておくか、出向の都度細かい労働条件などを提示し、個別の同意を得ることをお勧めします

 

 次に注意すべき点としては、出向命令に関する規定を整備しても、出向することで労働者に著しい不利益が生じる場合は、出向が認められないことがあります。

 

 たとえば、介護が必要な親を残して、遠方の子会社への出向を命じられた場合、当該命令を拒否した従業員に対する解雇は無効と判断され、会社が裁判で敗訴したケースが見られます。

  

 以上のように一定条件をクリアした上での出向命令を拒否した従業員を解雇することはやむを得ない場合もあるでしょう。

  

 しかし、実務上は、あくまでも出向に応じるよう説得を試み、解雇する前に退職を勧奨するなど解雇を回避する努力は必要になります。

 

 いきなり解雇を通告するのではなく、段階を踏んで解雇という結論に至るというのは、法的なテクニック論という側面もありますが、心理面において、できるだけ円満に問題を解決するための心得でもあります。

  

 いずれにせよ、正当な業務命令を拒否するのは、従業員としては失格なのは確かです。経営者としては、腹が立つのも分かります。しかし、そのような社員に解雇を言い渡すときは、感情的にならず、諭すように話すことが肝要です。