2009年06月12日

残業命令を拒否する社員への対処法

nigaoe.jpg こんにちは。富山事務所の蓑輪です。

 

 正当な理由もないのに、残業命令を拒否する社員っていますよね。

  

 「社員はどこまで会社の残業命令に応じなければいけないか」という問題で会社と社員が争った場合、当事者どうしでの話合いではなかなか解決しないことがあります。そこで、最終的には、法廷に持ち込まれるわけです。

  

 有名な判例では、「日立製作所武蔵工場事件(最一小判平3)」というのがあります。この事件の概略は次のようなものです。

  • 工場でトランジスタの品質管理を担当する社員Aが手抜き作業を行ったため、良品率が低下した
  • 社員Aは手抜き作業を行っていたことを認めていた
  • 巻き返しを図るため、会社が残業を命じた
  • 社員Aはそれを拒否して帰宅し、翌日巻き返し作業を行った
  • その後、会社と社員Aの間にいろいろすったもんだがあり、結果、社員Aは懲戒解雇(処罰としての解雇)された

  

 この裁判での争点は、次のような点です。

  1. 社員Aは残業命令に応じなければいけない業務上の必要性があったのか?
  2. もし、社員Aが残業命令に応じる義務がなかったのなら、懲戒解雇は無効ではないか?

  

 懲戒解雇の件については、後日お話するとして、今回は「残業命令に応じなければいけない業務上の必要性があったのか」という争点につき議論していきましょう。

  

 結論から言うと、裁判所は「社員Aに残業命令に応じる義務があった」と判断しました。

 

 裁判所が会社の残業命令が有効と判断した根拠は次のようなものでした。

  1. 就業規則業務上必要なときは、組合との協定により労働時間を延長することがある」という規定が存在した
  2. 組合との協定(36協定)が適切に締結されていた
  3. 会社の残業命令には合理性があった

 

 この裁判の判決からも分かりますが、社員に残業を命じるには、就業規則に「業務上必要な場合は残業を命じる」旨を規定しておくことが必須条件になります。

 

 それに加え、36協定を適切に締結し、その内容にしたがって、残業を命令していく必要があります。なお、「36協定」については、次回以降、詳しく解説させていただきます。

 

 いずれにせよ、就業規則が整備され、36協定を締結しておけば、「業務上必要な残業の命令を正当な理由もなく拒否する社員」に法的には対抗できるものと考えます。

  

 なお、言うまでもありませんが、このようなハード面の整備以上に、日々の現場において、どのように残業を命令するかということが重要になります。まぁ、簡単にいえば、「言い方」ということでしょうか?例えば、残業なんてやって当たり前だぞ」というやや乱暴なスタンスで、残業を命令してしまうと、反発してくる社員もいます。そこで生まれた感情のすれ違いは、積み重なっていき、いずれ会社にとって悪い方向に作用します。

 

 実は、私は上記「日立製作所武蔵工場事件」の原告である社員Aさんの話を今から10年以上前に聞いたことがあります。当時はまだ大学生だった私は、「争いの根源は感情のすれ違い、もっといえば、コミュニケーション不足にあるんだなぁ」と素朴に感じたことを覚えています。まぁ、単純なことなんですが、これがなかなか難しいのです。

 

 当センターでは、会社の権利を守る就業規則を作成することを一つの理念に掲げております。しかし、規程を整備するだけでは片手落ちです。規程をしっかり運用し、会社も社員も気持ち良く働ける職場環境づくりのお手伝いができればいいなぁと考えています。

 

2009年10月03日

指示なし残業、ダラダラ残業を防ぐには?

似顔絵全身p.pngこんにちは、福井事務所の今井です。

 

前回は残業命令を拒否する従業員の対処法でしたが、

今回は逆に指示していないのに遅くまで残業をしたり、

定時でほぼ仕事が終わっているのにダラダラと残業を

続けてしまう従業員への対処の話です。

 

会社としては残業代の支払いも絡んできますので、

実務的にこういったご相談はかなり多いです。

 

ダラダラとした残業を防ぐためには原則として

「残業は会社の指示、命令によるもの」とし、

指示していない残業については「事前承認制」とすることが有効です。

 

指定の用紙を用い、事前に許可、承認制とすることで、

安易な残業を減らす効果があります。

申請書の様式は様々ですが、一例として下記のようなものが挙げられます。

残業申請書.jpg

また、このように事前承認制を取り入れる場合、

就業規則や賃金規程にも、残業の事前承認について規定しましょう。

就業規則等の中に残業を事前承認することが入ってなければ

事前承認をルール化する根拠がなく、片手落ちの制度となってしまいます。

 

規定の仕方としては、 

チェック.gif会社の命令によらず社員の意志で残業をするときは、所定の用紙にて事前に上長に残業の申請をして許可を得なければならない。

チェック.gif会社への申請がなく勝手に残業することは原則として会社は認めない。

この点について明記しましょう。 

 

ただし、如何に事前承認制の規定を定めても、ルールが形骸化して

承認なしで残業を行うことが日常的に行われる場合は

「会社には暗黙の了解があった」として残業代の支払い義務も

発生しますので、ご注意下さい。

 

また、規定で定めるだけでなく、実際に残業の多い社員について

残業を減らせるよう本人に計画的な目標を立てて努力してもらうことも重要です。

例えば1か月の残業時間が40時間の社員については、30時間に

おさめることができるよう下記のような管理表を本人に記載してもらい

残業削減についての自覚を促すことも対策に繋がります。

残業管理表.jpg

残業時間を日ごとにチェックさせ、10日で10時間、20日で20時間など

目標限度時間を設定して1カ月の目標を達成できるように記録します。

目標を達成した場合は何らかのインセンティブを設けると良いと思います。

 

このようにダラダラ残業を防ぐためのルールを定めることも必要ですが、

実際に業務に無理が生じることのないよう、各従業員ごとの業務量を

適正に管理して残業を必要としない業務体系を作ることも同時に行いましょう!

 

 

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