2009年07月18日

精神疾患による休職命令のタイミング

nigaoe.jpg こんにちは。富山事務所の蓑輪です。

 

 今日は「精神疾患による休職命令のタイミング」についてお話しましょう。

 

 そこで、本題に入る前に、休職とは何かについて簡単に説明しておきましょう。

 

 会社は、病気などで働けなくなった従業員を解雇することも可能です。しかし、一定の療養期間を設けてあげることで、回復する見込みのある従業員を直ちに解雇するのは、優秀な人材の流出を招くなど会社にとってもデメリットがあります。

  

 休職とは、このように何らかの事情で働けなくなった従業員をすぐには解雇せず、一定期間会社を休ませて様子を見る福利厚生制度の一種です。会社が休職を命じるのは次のような場合です。
 

  • 従業員が私傷病で働けないとき
  • 従業員が起訴されて有罪になるまでの間
  • 従業員が公職(地方自治体の議員など)になったとき
  • 他の会社に出向したとき など

 

 通常、休職の原因となった事情が一定期間内に消滅すれば、当該従業員は仕事に復帰できます。残念ながら、そうでない場合は、自然退職(又は解雇)扱いとなります。

  

 例えば、病気で働けない従業員に会社が6ヵ月間の休職を命じたとしましょう。当該従業員の私傷病が6ヵ月以内に治癒すれば、職場復帰可能となります。逆に、治癒しない場合は、退職又は解雇扱いとなります。

 

 休職制度を設けるかどうかは、会社が自由に決めても良いことになっています。ただし、休職制度を実施する企業については、就業規則に次のような事項を定めておかなければいけません

 

チェック.gif どんな場合に休職を命じるか?(例:私傷病で1ヵ月以上働けないとき など)
チェック.gif 休職期間の長さは?(例:6ヵ月 など)
チェック.gif 職場復帰させるときの手続きは? など

 

 以上が休職制度についての簡単な概略です。制度設計のコツなどについては、今後も都度解説していきたいと思います。

 

 では、本題に入りましょう。近年、大企業だけでなく、中小企業においてもうつ病をはじめとした精神疾患を患う人が急増しています。その原因は様々ですが、当センターの相談事案においては、次のようなケースが多いです。

  • 長時間残業による高い業務上の負荷により発症するケース
  • 人事異動等による急激な職場環境の変化により発症するケース
  • 業務とは直接関係のないプライベートな原因により発症するケース 他

 

 当然のことですが、このような精神疾患も休職の対象となります。実務的には、就業規則に「身体又は精神上の疾患があるとき」に休職を命じる旨を記載しておき、これを根拠に会社は休職を命じることになります。

 

 精神疾患の場合、周囲の人間が気づかない間に病状が悪化しているケースがあります。そして、気づいたときにはすでに重症化している場合がほとんどです。実際、当センターの相談事案のうち8割程度は、会社が気づいた時点で病状が重症化しているパターンです。

  

 そこで、精神疾患による休職において、会社が最も注意すべき点は気づいたときにすぐに休職を命じるということです。 精神疾患を患っている人を出社させてしまうと、十中八九症状が悪化します。それを防ぐには、すぐに休職を命じる必要があるわけです。

   

 当センターでは、精神疾患のサインを見逃さないための役員・管理職研修などを実施するなどして、問題を早期発見することを推奨しています。しかし、中小企業では、なかなかそこまでやっている余裕はないというのが本音かもしれません。したがって、精神疾患の発見→即休職命令という手順が意外に有効な対処法であると考えます。

 

 なお、就業規則に休職制度の定めがない会社については、一旦会社を辞めて病気療養に専念するよう促す(=事実上の解雇)ことになります。ただ、事案によっては、対象となる従業員との間で、覚え書きなどを取り交わし、特別措置としての休職を実施する場合もあります。

 

 精神疾患による休職については、今後も深い洞察が必要なテーマです。例えば、次のような問題は悩ましいテーマです。

  • 職場復帰のタイミングと手続きについて
  • 精神疾患と傷病手当金
  • 長時間残業により発症した精神疾患と労災の関係 など

  

 今回はイントロダクションという感じで、「精神疾患による休職命令のタイミング」について論じましたが、本コーナーでは、上記のような問題も含め、今後も「精神疾患と休職」について考察を行っていこうと考えています。

2009年08月08日

有給休暇の取得目的を聞くことはできるか?

nigaoe.jpg こんばんは。富山事務所の蓑輪です。

  

 やっと梅雨が明けましたが、富山はスッキリしない天気が続きます。皆さんいかがおすごしでしょうか?いずれにしても、体にはお互い気をつけましょう。

  

 さて、今日は「有給休暇の取得目的を聞くことはできるか?」というお題で話してみたいと思います。

  

 経営者なら、「この忙しいのに年次有給休暇を取得するとは何事だ!!」と思われたことが一度くらいあるでしょう。そして、その休暇がどうあっても取らなきゃいけない休暇かどうか確認したい衝動に駆られたこともあるかもしれません。

  

 そこで、社員に対し、「お前は、何のために休むんだ?」とつい聞いてしまうことがあります。何を隠そう、私も大学を卒業して独立するまで、9年間サラリーマンをやっていましたので、上司からこういう風に聞かれた記憶が何度かあります。

 

 若い頃は、血気盛んだったので、「何で、そんなこと答えなきゃダメなの?」と上司に食ってかかったこともありました。今思えば、若気の至りでしたが、皆さんの会社でも、私のようなちょっと生意気な(?)社員がいるのではないでしょうか?

 

 年次有給休暇は、労働基準法で認められた労働者の権利です。したがって、その利用方法は、労働者が自由に決めてもよいとされます。つまり、会社がその利用目的を質問してきても、残念ながら、社員がそれに答える義務はありません。しかし、次のような場合はどうでしょうか?

  

【ケーススタディ】
 
A社では、急な注文により、明後日までに普段の3倍の商品出荷が必要になりました。このように猫の手も借りたいくらいの忙しさにもかかわらず、TさんとOさんの2名がいきなり年次有給休暇の取得を請求してきました。

  

 そもそも、このように業務が多忙な場合は、会社に有給休暇の取得時期を変更する権利(時季変更権)が認められています。そこで、A社の社長は、TさんとOさんの両方に休暇を取る理由を聞いて、よほどのことでない限り、違う日に休暇を取らせようと考えました
  

  • Tさんの取得理由・・・急に子供の手術が入ったので、立ち会いたい
  • Oさんの取得理由・・・何度聞いても答えない

 

 これを聞いた社長はTさんだけに有給休暇の取得を認めました。後日、Oさんは社長に対して、「なぜTだけが、有給休暇を取れるんだ!!」と抗議をしました。さて、A社の社長の行動について、問題はあるでしょうか? 

 

  結論から言えば、社長の行動は合理的であると言えます。上記ケースのように、会社側が業務多忙等を理由に時季変更権を行使できるとしても、それを行使するかどうかは会社の自由です。

  

 そこで、社長はTさんとOさんの両方に有給休暇の取得理由を聞いて、どうしても休まなければいけないのなら、休ませようと考えました。

 

 社長の問いかけに対し、Tさんは「子供の緊急手術」という理由で休みたいことを告白しました。一方のOさんは、かたくなに口を閉ざし、取得理由を話そうとしませんでした。結果として、Tさんだけが休暇を取得できました。

 

 このように、Oさんは有給休暇の取得目的を明らかにしなかったことにより、不利益を被ったわけですが、それは会社が法的に認められている時季変更権を行使したからです。したがって、社長は、Oさんの抗議を真に受ける必要はありません。堂々と対処すべきだと思います。

 

 以上見てきたように、会社が時季変更権を行使できるような場合、社員から任意にその利用目的を聞き出し、その結果如何で、時季変更権を行使するかどうかを決めることは問題ありません

 

 ちなみに、時季変更権がない場合でも、任意に休暇の取得目的を聞き出すことは可能でしょう。ただし、この場合は、「利用目的次第で有給休暇を与えない」という取扱いはできないことに注意しましょう。

 

2009年08月21日

有給休暇の取らせ方をひと工夫

nigaoe.jpg こんばんは。富山事務所の蓑輪です。

 

 さて、今日は年次有給休暇の取らせ方についてのちょっとした工夫をご紹介します。

 

 休暇とは、「働かなければいけない日に休むことができる権利」のことをいいます。一方、休日とは労働義務が免除される日です。つまり、もともと働かなくてもよい日を休日というのです。

  

 休暇に関して、労働基準法では、毎年一定日数以上の休暇を与えることが義務づけられています。これを「年次有給休暇」といいます。従業員に与えられる年次有給休暇の日数は勤続年数により異なりますが、最大で1年当たり20日間の年次有給休暇が与えられます。

 

 また、1年の間に使いきれなかった有給休暇は翌年度に限り、繰り越すことが可能です。つまり、仮に、当年度の20日間の有給休暇を1日も使わずに、翌年度に繰り越した場合、最大40日間の有給休暇を取得することが可能になります。

 

 経営者からは、「通常の出勤日に年間で40日も休まれたら、たまったものではない!!」という声も聞こえてきそうです。しかし、「法律で認められた権利だから」と言って、有給休暇をバンバン取得する従業員もいるのは確かです。

 

 また、有給休暇に関しては、直前に請求されたりして、業務の調整がつかず、社内が混乱することだってあるかもしれません。

 

 このように中小零細企業には、ちょっと厄介がられる有給休暇ですが、私は与え方にひと工夫すれば、従業員のモチベーションアップにつながるものだと考えています。

 

【ケース@:特別な日に有給休暇を取得させる】

 会社としては、突然有給休暇を請求されるよりも、いつ休暇を取るのか事前に分かっていた方が助かります。そこで、各従業員にとっての「特別な日」に有給休暇を取得させるよう、「メモリアル計画年休制度」を就業規則に規定しておきます。

 

 例えば、配偶者や子供の誕生日とか、結婚記念日とか、各自が特定の日(又はその前後)に計画的に休暇を取らせるようなしくみを作り、前もって、どの日に有給休暇を取得するか、労使協定に記載しておきます。

 

 最大で年間40日間も有給休暇を使う権利があるのだから、少なくとも2、3日は大切な家族のために使う日があってもよいでしょう。また、家族のために有給休暇を取りやすい環境を整えるということは、企業イメージ向上という観点からも、悪いことではありません。

 

【ケースA:半日休暇を認める】

 従業員の中には、丸一日ではなく、半日の有給休暇を取りたいという人もいます。例えば、午後から病院に行きたいというような場合は、半日有給休暇の制度は有効に使えます。

 

 そこで、就業規則に半日有給休暇の制度を定めておくことも、従業員のやる気を高めることにつながるケースがあります。会社によっては、半日有給休暇を取得できる回数を制限するなどの制約も必要でしょうから、その辺も就業規則に定め、自社オリジナルの半日有給休暇制度を作ってみるとよいでしょう。

  

 今回は、有給休暇の与え方の工夫について、2つのケースをご紹介しました。ちょっとしたことで、従業員のやる気&安心感が違ってくると思います。できることから、試してみてください。