2009年06月26日

企業の合併と就業規則

nigaoe.jpg こんにちは。富山事務所の蓑輪です。

 

 今日は「企業の合併と就業規則」についてお話しましょう。

 

 企業の合併には大雑把に分類して2つのパターンがあります。A社とB社が合併するという例で確認してみましょう。

 

  1. A社が存続し、B社が消滅する
  2. A社とB社が合併し、新会社C社ができる

 

 1の類型では、A社を存続会社、B社を消滅会社と言います。一方、2の類型では、A社とB社を消滅会社、C社を設立会社と言います。

 

 1、2いずれの合併の場合でも、消滅会社の労働条件(就業規則)は存続会社又は設立会社がそのまま引き継ぐことになっています(一般承継)。つまり、合併後のA社又はC社において、旧A社の社員は、旧A社の就業規則、旧B社の社員は、旧B社の就業規則にもとづいて働けばよいことになります。

  

 分かりにくいので、具体例で説明しましょう。合併前のA社及びB社では、就業規則で、勤務時間の体系が次のように定められていました。

 

@ A社・・・始業 AM8時00分  終業 PM17:00 休憩 1時間 (実働 8H)

A B社・・・始業 AM9時00分  終業 PM17:00 休憩 1時間 (実動 7H)

 

 合併後の存続会社(A社)又は設立会社(C社)では、@、Aの規定は両方とも有効となります。そして、旧A社の社員は@の勤務時間体系のもとで、旧B社の社員はAの勤務時間体系のもとで、それぞれ働けばよいことになります。

 

 つまり、企業が合併した場合、合併後の会社では、数種類の勤務条件が存在すると言えます。近年においては、中小零細企業においても、積極的に企業合併が行われていますが、合併に伴い、労働条件の凹凸が発生し、職場でいろいろな混乱が発生している例も見られます。

 

 このような凹凸は、合併前にしっかりと整理・再編して、合併話を進めればいいのですが、中小零細企業の合併では、この点が後回しになることが多いのが現実です。

 

 以下に、私が企業様よりご相談を受けた例をいくつかご紹介します。

   

【ケース1:休日日数の違いにより生じたトラブル】

 A社により吸収合併された旧B社の年間休日日数は105日。一方、旧A社の休日日数は94日でした。A社は、この状態をそのまま放置したため、旧A社の一部社員より不満が続出。旧A社の社員と旧B社の社員の間でいざこざが発生し、職場のチームワークが乱れた。

 

【ケース2:退職金額の違いが招いたベテラン社員のモチベーション低下】

 C社はM&Aにより企業規模を大きくしてきた。労働条件については、その都度、労働組合と話し合いを行い、合併前後の凹凸を整理・再編してきたつもりだった。しかし、退職金制度の改革が後手に回ってしまい、気が付くと定年退職者により、その金額に最大で約500万円もの差がついていた。一部のベテラン社員のモチベーションが一気に低下した。

 

  さて、ここまで議論を進めてきて、どうもスッキリしない方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

 というのは、経営者の中には、「合併すれば、存続会社(又は設立会社)の就業規則に則って働くのが当たり前じゃないの?」とお考えの方も少なくないからです。まぁ、合併後も消滅した会社の就業規則が残るというのは、確かに理解しがたいことかもしれません。

 

 ただ、合併のドサクサに紛れて、労働条件を著しく低下させたり、リストラするという例も見られるため、そのようなことはあってはならないというのが裁判所の立場のようです(存続会社が消滅会社の社員と面接し、労働組合の委員長のみが解雇されたのは不当とする裁判例などがあります:同和火災海上事件、大阪地裁判)。

 

 いずれにしても、企業が合併するときは、労働条件の凹凸を整理・再編し、就業規則や労働協約を改定しておくことが、さらなる企業の発展には必要不可欠であると考えます。なお、就業規則改定の方向性は、次の3つです。

 

  1. すべて、労働条件が高い方に合わせて、就業規則を改定する
  2. トータルバランスを考えて、社員に不利益にならないよう就業規則を改定する
  3. すべて、労働条件が低い方に合わせて、就業規則を改定する

 

 従業員の納得性が高いのは、1でしょう。ただ、企業によっては、すべてを高い方に合わせるというのは難しい場合もあります。その場合は、適正な手続きを経て、2又は3の道を選択することが必要です。ただし、その際は、労働法に詳しい専門家に相談する必要があるでしょう。