2009年06月08日

モデル就業規則に潜む罠

似顔絵全身HP用.jpgこんにちは、福井の今井です。 

 

就業規則の改定を依頼された会社で「これまで使っていた就業規則を見せて下さい」

とお願いすると、冊子でしっかり製本された就業規則を出してもらうことがままあります。

 

見栄えは立派なのですが、中身を拝見すると、定型の文章の中に

労働時間や休暇などの数字を穴埋め記入するだけの

いわゆるモデル就業規則と言われるものです。

 

一昔前はこういった市販のモデル就業規則集が多かったのですが、

昨今はモデル就業規則もインターネットで簡単にダウンロードできるようになっており、

普通のワードで印字されたモデル就業規則を見せてもらうことが増えてきました。

 

この場合、一見するとプロが作った就業規則と大差がないように思えますが、

細部を見ていくと会社の業種や規模、特徴などが一切反映されておらず、

徹底して労働者が有利(権利を主張しやすい)なつくりになっているのですぐに分かります。

 

モデル就業規則をそのまま使用することは大きなリスクを伴います!

 モデル就業規則のメリット  モデル就業規則のデメリット
 簡単に作成できる  労働者が権利を主張しやすく作られている
 労働基準法に違反していない  最新の法律や制度に対応していない
 必要最低限の項目を網羅している  会社に合わない不要な規定が入っている
   労使紛争の際は圧倒的に会社が不利

 

<危険なモデル就業規則の例>

「年次有給休暇」の規定

・・・「従業員が請求した時季に与える」となっていませんか?

これだけだと、忙しい日の朝に急に請求された場合や、

無断欠勤をした日の翌日に有給扱いを申し出られた場合に

この規定を根拠に会社は拒否できるでしょうか?

 

「休職」の規定

・・・「業務外の傷病による欠勤の場合…1年以内」などとなっていませんか?

入社して2週間の従業員が持病で会社に来られなくなった場合でも

会社は1年間、社会保険料を負担して復帰を待つのでしょうか?

 

他にも解雇、賃金、退職金の規定など、

モデル就業規則には恐ろしい「落とし穴」が潜んでいます。

 

一度作成して届け出た就業規則に対しては、

従業員はその労働条件について既得権を持ちます。

 

 そして一度決めた労働条件の引き下げは「労働条件の不利益変更」となり、

原則として従業員個別の合意がない限り認められておりません。

 

就業規則はとりあえず形になればいいというものではありません。

会社を守り、組織力を強化するためには、

それぞれの会社の実情に合った就業規則を作成しましょう。

2009年06月18日

就業規則は経営者を守る唯一の武器

nigaoe.jpgこんにちは。富山事務所の蓑輪です。

 

 今日は、「就業規則は経営者を守る唯一の武器である」というお話をします。

 

 日本には労使トラブルから経営者を守ってくれる法律は存在しません。だから、経営者は労務リスクから自分の身を自分で守らなければいけないのです。

  

 一方、労働者は法律によって、手厚く保護されています。また、労働組合など労使トラブルに巻き込まれた労働者をバックアップしてくれるシステムも充実しています。

 

 なぜこのようなことになっているかというと、日本のような資本主義国家では、資本家(=経営者)が強者で、資本家に雇用されなければ、生活していけない労働者は弱者だと考えられているからです。

  

 確かに、封建的な色彩がまだ色濃く残っている昭和初期くらいまでなら、このような考え方も必要でした。また、現代社会においても、大企業のように強大な資本力をバックに多くの人の人生に影響を与える組織から労働者を守ることは国の重要な責務だと考えます。

 

 しかしながら、中小零細企業に対して、大企業と同じような厳しい規制をかけることは、経済の健全な発展に必ずしもプラスにならないと思うときがあります。まぁ、なぜそう思うかは次の機会にゆっくりお話することにしますが、中小零細企業にも、しっかりと労働法制による規制がかけられているのが現実です。

  

 つまり、労使トラブルが発生した場合、経営者はスタート時点から相当不利な立場に立たされているわけです。こうした現実を直視した上で、経営者は労務リスクから自身を守る術を考えておく必要があるのです。

  

 では、経営者はどうやって自分の身を労務リスクから守るのか?答えは簡単です。就業規則を最大限有効に活用するのです。

  

 「おいちょっと待て。就業規則って、労働者に有利なことが書かれた文書だろ?そんなものでどうやって俺の身を守るんだ?」という声が聞こえてきそうですね。

  

 確かに、就業規則には、法律で定められた労働条件の最低基準を下回る事項を記載することはできません。そういう意味では、「就業規則=労働者に有利な文書」ということになります。

  

 しかしながら、法律に書かれてない事項については、原則的には、経営者が自由に自分の考えを記載することができます。例えば、こんな感じで・・・。

 

  • お客さんと接する部門に所属する社員については、茶髪・ピアスを禁止する
  • マイカー通勤をするには会社の許可が必要
  • 5分の遅刻でも、30分相当額の給与を控除する

  

 上記のような事項は、経営者としては、ある程度自分の考えを反映させたい部分かもしれません。こんな細かいことは当然法律には何も書かれてありませんので、原則的には、経営者がそうしたいと思うようにやればいいわけです。

 

 とは言え、何もルールがないのに、こういう扱いをするとトラブルになります。そこで、このような法律に定めのない会社独自のルールを就業規則に定めるのです。

 

 なぜ、就業規則にルールを定めておくのが良いかというと、それは、就業規則が会社が主導権を握りながら、労働条件や服務規律を規定できる唯一の文書だからです。

  

 法律上、就業規則の作成手順は次のようになっています。

  1. 会社が内容を考える
  2. 従業員の過半数代表者(又は過半数組合)の意見を聴く
  3. 意見の内容を付して、労働基準監督署に提出する

  

 つまり、極端な話ですが、会社が作った就業規則の内容に従業員代表が反対していても、会社はその意見を聞けばよく、規定の内容が合理的で、適正な手続きさえ経ていれば、一応有効となります。

  

 就業規則と同様、職場でのルールを定めた文書に労働協約というのがあります。これは、会社と労働組合が締結するものですが、労働協約は労使双方の署名又は記名・押印がなければ、有効なものと認められません。つまり、会社又は組合のいずれかが、内容に反対であれば、有効なものとは認められないのです。

 

 そのような点で、就業規則は会社の裁量権が認められた唯一の文書であり、労使関係を規定する際には、会社は就業規則を最大限有効に活用すべきだと考えます。